知ってお得な年金情報

<5>年金と「戸籍」「住民票」「マイナンバー」

 私たちは、日頃の生活の中で戸籍や住民票が常時必要となることはありませんし、海外で生活しているとその必要性に触れる機会は少なくなります。それだけに日頃からその内容、役割を理解しておくことをお勧めします。

 戸籍は、日本国民の国籍と親族関係を登録公証する唯一の公文書で、社会生活上、なくてはならない重要な役割を担っています。因みに、米国には戸籍はありません。「家」を中心とする日本と、「個人」を中心とする米国との違いなのでしょう。ですからアメリカ市民権の証明は「出生証明」か「帰化証明書」で行われます。

 戸籍制度は、出生から死亡に至るまでの身分関係を「戸籍」という公文書に登録して、これを公に証明することを目的にしています。戸籍謄本(抄本)は、婚姻・出生の届出や日本国の旅券の発行等の際、身分関係の確認手続きにはなくてはならないものです。

 例えば、親の遺産の相続手続きの際に、子供として相続人であることを証明する場合や年金関連では、加給年金の請求手続きの際夫婦関係を証明する場合、又、夫の死亡後、妻が遺族年金の受給者であることを証明する手続きをする場合など戸籍により証明します。

 全ての日本国民は、日本国内に居住するか否かにかかわらず、出生、婚姻、死亡といった身分事項を戸籍に登録することになっています。将来の年金申請や遺産相続等に備えるためにもご自身の本籍地、戸籍の筆頭者はどこかに記録しておくことをお勧めします。出来ればご自身の戸籍謄本をコピーでも良いので保持されて置けばいざという場合安心です。

 海外在住の皆さんが、わざわざ日本の本籍地の市町村役場に届を出さなくても済むよう、領事館では各種届を受け付けています。海外にお住まいの場合、主な届出の提出期限は3ヶ月以内となっていますが、特に「出生届」(出生後3ヶ月以内)、「婚姻に伴う氏の変更届」(結婚後6ヶ月以内)、「離婚に伴う氏の変更届」(離婚後3ヶ月以内)については、それぞれの期限内に届出を行わないと、国籍を失ったり、家庭裁判所の許可が必要になる場合もありますのでご注意下さい。

 また、戸籍と住民票は全く別のものです。居住地を登録し、地方自治体との関係を明示するのが住民登録制度です。居住地は住民票と関連付けて戸籍の附票に記載されており、居住地の追跡に利用することができます。日本から米国に移住する際、市町村役場に転出届を提出しておけば附票に出国年月日が記載されます。日本の年金手続きの際に、実際に保険料を支払った期間だけでは受給資格の10年を満たさない場合、カラ期間(20歳から60歳まで日本国籍で海外に在住した期間)を加算して10年以上の加入とすることが出来ますが、その際、附表によりカラ期間の証明を簡単にすることができます。

 年金と住民票との関連で最近見受けられるのが、国民年金加入無効問題です。

 日本国内で国民年金に強制加入されていた方が海外に転出し国民年金に継続加入したい場合、任意加入を選択できます。その場合、日本出国時に住民票がある区市町村の役所の住民課等に国外転出届を提出後、別途国民年金課に行って強制加入から任意加入への変更を届出する必要があります。

 国外転出時に強制加入から任意加入への切替えの手続をすることなく国民年金の加入を継続すると、国民年金法第9条2項(日本国内に住所を有しなくなったとき加入資格を喪失する)に基づき国外転出による住民票の除票時に遡り加入資格喪失となってしまいます。この点は注意する必要があります。

 又、相談が多いのは国民年金の保険料未払いの督促状の相談です。日本出国時に転出届を提出せず渡米すると、出国後も住民票はそのまま残っていることから日本に住んでいるとみなされます。日本在住者は会社に勤務して厚生年金に加入していない限り、国民年金は強制加入です。そこで国民年金の保険料の未払い分の督促が行われたわけです。また住民票が残されていると国民年金に加えて、国民健康保険料、40歳からは介護保険料の支払い請求が出国時に登録されていた市町村役場から実家などに送られてきますからご注意ください。

 なお在留届と住民票は連携されていません。日本に住んでいる時は市町村役場に住民登録を行います。米国に移住したら大使館、総領事館に在留届を提出すれば日本の住民登録と同様の効果があると思われがちですが、在留届は残念ながら日本の住民登録とは連携されていませんのでご注意ください。

 一方、2024年5月27日にマイナンバー法が改正されました。これまでは折角日本でマイナンバーカードを申請取得しても、海外に出国する際に転出届を提出するとカードは無効になってしましたが、今後カードは海外に転出しても失効することなく継続して利用可能となりました。また在外公館でのマイナンバーカードの申請や受け取りも可能となりました。日本年金機構では、マイナンバーを利用することにより、年金相談や照会、各種届出の省略、各種届出時の添付書類の省略等が可能となっています。今後、海外に住む日本人にとり、マイナンバーによる行政手続きの効率化と利便性の向上が期待されます。

 米国で安心して海外生活を送るためには、日本と米国の行政のルールを正しく理解しておく必要がありますね。

 

<4>年金受給・幸せの方程式

 日本の年金を受け取るには、国民年金・厚生年金・共済年金の加入期間を合計して10年以上ないと、原則として年金の受給資格はありません。

 実は日本の年金の受給資格は2017年までは年金加入期間25年以上でした。その為海外に移住する際、将来日本の年金に再加入して加入25年の受給資格を取得することもないだろうということで、それまで加入してきた年金を一時金で受取(現在制度は廃止)られる方が多数いらっしゃいました。

 その後時代は変わり、今では海外にお住いの方は日本の年金が掛け捨てになってしまうことは殆ど皆無と言ってよいほどになりました。その最大の理由は、少しでも無年金者を減らし年金受給者を増やすために2017年8月から受給資格が加入25年から10年に短縮されたことです。加えて日本で短期間でも年金に加入した後、米国にいらっしゃった方には幸せの方程式が用意されているのです。

 その方程式とは、「日本の年金加入期間」+「カラ期間」+「外国(米国)年金加入期間」の合計が10年以上あれば日本の年金の受給資格を得ることが出来るということです。

 注意点は.....

 (1)この3つの期間は重複することはできません
米国年金加入期間のうち、日本の年金にも加入していた期間は計算上「日本の年金加入期間」に含まれ、「米国年金加入期間」から除かれます。

 (2)年金額はあくまでも「日本の年金加入期間」つまり主に実際に年金保険料を支払った分だけが反映されます

 (3)遺族年金の受給資格はこれまで通り加入25年が必要です。ですから年金の受給申請時に、できる限り受給資格期間25年以上を幸せの方程式を活用して目指すことをお勧めします。米国滞在中、国民年金に任意加入した期間は、当然「日本の年金加入期間」に入ります。

 (4)カラ期間(=合算対象期間)とは日本国籍で20歳から60歳まで海外に在住していた期間のことで、年金額には反映しないという意味でカラ期間と言います。このカラ期間をまず「日本の年金加入期間」に加算して受給資格の有無が算定されます。カラ期間の証明方法で一番簡単なのは戸籍の附表です。日本を出国するときに転出届を提出しておけばその記録が附表に掲載されます。
 附票に転出時点が記載されていない場合は出入国在留管理庁に出入国記録に係る開示請求を行います。ここで注意する点は、日本年金機構はカラ期間を計算する時には日本を出国した1年後からカウントを開始するということです。毎年日本に一時帰国しているとカラ期間が計算されないということも起こりますのでご注意ください。

 (5)「外国年金加入期間」です。日本では社会保障協定が2000年2月ドイツを皮切りに現在24か国との間で発効済みです(2024年4月1日現在)。協定の目的は①社会保障制度の2重加入防止②年金の掛け捨て防止の為です。この掛け捨て防止策とは、お互いの国の年金加入期間を年金受給資格算定上、期間通算できるようにすることで、年金を受給し易くして掛け捨てを防止しようとするものです。つまり滞在国の年金加入期間を日本の年金加入期間に加算して10年以上になれば日本の年金が受給できます。逆に滞在国の年金加入期間に日本の年金加入期間を加算して滞在国の年金受給資格期間をクリアーすれば滞在国の年金も受給できます。なお、発効済み24か国の内4か国(英国、韓国、イタリア、中国)はこの期間通算の適用外ですのでご注意ください。

 具体例として米国の場合を取り上げます。

 ①日本で5年間厚生年金加入されたAさんが55歳で渡米され58歳で米国籍を取得された場合、米国で働かれた場合と働かれなかった場合を方程式に当てはめて比較してみます。

 日本の年金加入期間は5年間、カラ期間は55歳から57歳までの2年間で日本の年金受給資格算定期間は合計7年となります。もしAさんが米国で勤務され米国年金に3年以上加入されていればその3年を加えることにより10年以上加入となり受給資格を満たします。勤務されない場合は7年止まりで日本の年金の受給資格は取得できません。またAさんの米国での勤務期間が5年を超えればその時点で日本の年金加入期間5年と米国の年金加入期間5年を足して10年(40クレジット)以上となり米国年金の受給資格も獲得できます。米国年金受給資格の算定上、日米の年金加入期間の通算を行う場合は米国の年金加入期間は最低6クレジット(約1年半)以上が必要となります。「カラ期間」は使えません。

 ②米国で働いていた夫の突然の死去に伴う遺族年金受給の例です。

 夫は日本の厚生年金に8年加入後渡米。米国年金は20年加入済みで勤務中に死亡しました。一般的には日本の年金加入期間が10年無いので日本の年金受給は諦める方が多いのですが、そこで幸せの方程式で8年+20年=28年となり日本の遺族年金の受給資格である年金加入期間25年をクリアーし8年分の遺族年金を受給できます。

 (6)日本に住んでいると年金は強制加入です。会社に勤務される方は厚生年金、公務員の方は共済年金、それ以外の方は国民年金に加入します。海外に居住するようになると、加入(国民年金)は任意となります。

 海外に転出されると大半の方は、日本の年金とは縁遠くなってしまいます。しかし年金額を増やしたい場合は、日本国籍であれば海外から任意加入の国民年金に加入することが出来ます。国民年金はその費用の半分は日本国が負担しており非常に有利な制度です。また、日本の年金は受給条件さえ満たせば国籍に関係なく受け取ることが出来ます。年金は老後の「幸せの黄色いハンカチ」です。制度をよく理解して備えられることをお勧めします。

<3>日米社会保障協定でもらい易くなった日米年金

 日米社会保障協定は、①社会保障税の二重払いの回避②年金の掛け捨て防止の目的で2015年10月に発効しました。①は、派遣期間が原則5年以内の米国滞在であれば、日本の年金事務所で予め「適用証明書(Certificate of Coverage)」を取得しておけば、引き続き日本の厚生年金、健康保険に加入継続でき、米国の社会保障税は免除となり二重払いが回避されます。②は、日米の年金の加入期間を、日米の年金受給資格の算定上相互に通算出来るとうものです。協定が発効されるまでは日本の企業は派遣社員を米国の社会保障制度に加入させ、一方で日本の社会保障制度にも継続加入させていましたので、この協定によりかなりの経費負担減となりました。

 一方、当時の派遣社員の方の駐在期間は3年から5年位で折角米国年金制度に加入しても年金受給資格である加入10年(40クレジット)を大半の方がクリアーできず掛け捨て状態となっていました。そんな中、協定が発効し多く駐在員経験者にとっても朗報となりました。例えば米国年金に5年間加入して日本に帰国された方も、日本の年金の加入期間を加算することにより受給条件40クレジットをクリアーし、ご自身の支払われた5年分の年金を受給できるようになりました。

 日本の年金受給条件は2017年8月からはそれまでの加入期間25年間から米国並みに10年に短縮されました。日本の年金に20年間加入していても5年足らず受給に至らなかった方の場合は米国年金の加入期間をそれに加算することにより25年をクリアー出来て喜ばれるケースもあったわけです。10年に短縮された以降は日本の年金加入者にとり米国の年金加入期間を活用して受給資格を得る必要性は薄れたと言えるかもしれませんが、ここで忘れてはならない米国年金加入期間の活用のメリットがあります。それは日本の遺族年金の受給資格はこれまでと同様25年以上の加入期間が必要であるということです。その場合米国年金の加入期間を加算することにより25年以上となれば、遺族年金の受給資格を獲得できるわけです。日本で働かれていたご主人が米国で亡くなられた場合も、日本の年金加入期間が少なかったので日本の年金申請を諦めていた方の場合も、米国年金加入期間を加算して日本の遺族年金を受給出来たケースもあります。周りにこんな方がいらっしゃれば是非教えてあげてください。

 また加給年金の受給資格は厚生年金の加入月数240ヶ月(20年)以上が条件ですがこの期間の計算上でも米国年金加入期間を加算することが出来ます。加給年金額は生年月日が昭和18年4月2日以降の場合408,100円ですから決して見落とすわけにはいきません。

 この協定でよく質問があるのは“私は日米両国の年金に加入しているが、将来受給する場合は両国の年金加入期間を通算した上でどちらの国の年金を選択するのですか”と言った趣旨の問い合わせです。日米両国の年金制度は基本それぞれ独立した制度です。それぞれの国の年金受給の為の加入期間を満たせば年金はそれぞれの国から独立して受給できます。例えば日本の年金の加入期間が10年以上あれば米国年金の加入期間をみなしで加算しなくても、言い換えれば協定を活用して米国年金の加入期間を加算しなくても日本の年金は受給できます。協定を活用して年金の受給資格をクリアーするのはどちらかの国の年金加入期間が受給するために不足している場合です。

 例えば年金の加入期間が日本4年米国6年の場合、このままでは両国の年金は受給出来ません。その際、協定を活用して相互の年金加入期間を通算すれば4+6、6+4で加入10年以上(40クレジット以上)となり4年分の日本の年金と6年分の米国年金が受給できるわけです。協定の内容をよく理解して老後に備えましょう。

 

<2>米国外に滞在した場合の米国年金受給への影響

  正しい情報が伝わらず、米国年金受給者の方が困惑されているテーマである「米国外に滞在した場合の米国年金受給への影響」について説明いたします。

 実はこれまでに問い合わせが多い相談の一つが、日本帰国に際し米国年金が引き続き支給されるかどうかソーシャルセキュリティー(SS)オフィスに問い合わせたところ、次のような回答であったが本当かというものです。

 「米国を6ヶ月以上離れると米国籍者でない限り年金は支払われない」「日本でも継続して米国年金を受給できるが、6か月毎の米国入国が条件である」「米国年金は、米国籍があれば100%支給されるが、グリンカード保持者の場合は25%減額される」「米国籍者やグリンカード保持者以外には米国年金支給は支給されない」というものです。こういったSSオフィスの回答はすべて間違いです。

 最近の事例では、グリンカード保持者のAさんから、昨年ほぼ1年間日本に滞在しその後ハワイに戻るとソーシャルセキュリティー(SS)オフィスから“貴方は米国籍ではないので海外にいた期間は年金が受給できない。昨年受け取った年金の半分を返金せよ”というという手紙が届き当惑され相談がありました。AさんはSSオフィスで受給手続きをした際、米国を出国する時は書類で届けるように言われていたので日本に行く際出国届を提出しハワイに戻り帰国の報告をしたところその1週間後にその手紙が届いたと言うことでした。

 残念ながらこの様なSSオフィスのいい加減な対応は、全米に及んでいると思われ、しかも、かなり以前から現在まで繰り返されています。米国年金の受給資格を維持するため仕方なく米国籍を取得された方が少なからずいらっしゃいます。現在も年金のために米国籍を取得してしまったと残念がる方が引き続き発生しています。

 何故このようなことが生じてしまうのかについて考えて見ます。

 米国SSA(米国社会保障庁)は米国外滞在者に対する米国年金の支払いについて{EN-05-10137 - Your Payments While You are Outside the United States (June 2020) (ssa.gov)}次の様に説明しています。 

(1)米国籍者の場合、受給資格さえあれば米国外に滞在していても米国年金を支払います。(つまり原則、米国籍でないと年金は支給されないということです)但し、あなたが次の国の国民であるなら、米国外にどれだけ滞在しようと、受給資格さえあれば米国年金は引き続き支払われます。(例外国)日本、オーストリア、イスラエル、フランス、韓国等21カ国 EN-05-10137の5ページ3.を参照。

(2)あなたが米国籍者でなく、日本、フランス、メキシコ、ブラジル等77カ国の国民である場合、6か月以上米国外に滞在した場合、次の例外国を除き、米国年金の支払いは米国を離れた6か月後にストップします。(例外国)現在、米国が社会保障協定を締結している国 日本、オーストラリア、フランス、韓国等21カ国の居住者(Residents)である場合。EN-05-10137の8ページ6.と10、11ページに協定締結国のリストを参照。

 以上から、日本国籍者は日本に住んでいても米国年金の受給資格さえあれば、米国年金を受給できるということです。そして年金受給者の当惑の原因は、SSオフィスの担当者がこの例外規定を理解しないまま原則だけを相談者に伝えた結果ということです。

 しかしながら懸念されることは、その様なSSオフィスの窓口担当者の不勉強にとどまらず、SSAの本部の対応も100%正しくは行われていないということです。

 今回の相談者の方にはすぐクレーム(Form SSA-561-U2 REQUEST FOR RECONSIDERATIONを使用)を提出するようアドバイスをしました。

 老後の生活の基盤である年金の制度については、正しい理解のもとに対応してもらいたいものです。

<1> 日本の年金の課税

 日本の年金の申請中や受給中の方から、「日本の年金の課税は日本か米国か」「日本の年金は日本の銀行口座に振り込まれているので、米国では課税対象外と考えてよいか」「日本年金機構から、租税条約に関する届出書を提出するようにとの連絡が来ているがどうしたらよいか」というご質問を良くいただきます。

 米国に居住し日本の年金を受給している方の年金所得は、日米租税条約により居住国である米国で納付と定めれています。年金が日本の銀行口座に振り込まれていれも、米国に住んでいる限り米国で申告となります。一方、年金支給のたびに所得税が源泉されるためそのままでは二重課税となってしまいます。それを避けるために一定の手続きを踏めば、日本での源泉所得税が免除されます。

1. 源泉所得税が免除される為の手続き方法
 「税条約に関する届出書等」の書類を日本年金機構に提出します。具体的には① 税条約に関する届出書 ②特典条項に関する付表 ③居住者証明書(U.S. Residency Certification、IRS発行Form 6166)の3種類です。①②のFormは日本年金機構のHPから取得できます。居住者証明書はIRSのForm8802(IRSのHPから入手可能)に必要事項を記入して申請します。

2. 書類の提出時期
 これらの①~③の書類は、日本の年金を請求するとき、及びその後3年ごとに日本年金機構へ提出することになります。これらの書類を提出しない場合は、日本の税法に従って年金の支払いごとに所得税が源泉徴収されます。源泉徴収されても後日①~③の書類を提出すれば、その後の源泉徴収はなくなります。すでに徴収された所得税については、還付の手続きも可能です。
 
 しかしながら実は、米国にお住まいで日本の年金受給者の大半の方は、届出書の提出の必要ない方です。その理由は以下の通りです。

3.「税条約に関する届出書等」の提出が省略できる場合があります。
 年金額が源泉所得税を徴収されない金額の方については提出を省略することができます。提出が省略可能な源泉徴収されない年金額は(1)65歳未満の方・・年額60万円未満(2)65歳以上の方・・年額114万円未満(老齢厚生年金・老齢基礎年金合計)。年金を受給している方については、3年ごとに日本年金機構から書類提出のお知らせが届きますが、年金額がこの基準以下であれば、源泉徴収はされませんので、「税条約に関する届出書等」の提出の必要はありません。この省略によりForm6166の作成費用$85と手続きの手間が節約になります。

 65歳未満では提出不要の方でも、65歳になると老齢基礎年金が支給開始となりますので年金額が増えます。このために提出しなければ源泉徴収される場合もありますのでご注意ください。

 日本年金機構から書類の提出を求められた時は、ご自分の年齢と年金額を確認し、提出が必要かどうかを判断することが大切です。提出の省略に該当される場合は、「租税条約に関する申立書」を提出するか、“年金額が源泉徴収対象額以下なので、租税条約に関する届出書等は提出しません”と言う申立の手紙を添え、日本年金機構に返却してください。

 申請手続き中の方から、自分の年金額は少額なので「租税条約に関する届出書等」の提出は必要ないと思うが、年金事務所の担当から強く提出をもとめられ、提出しないと申請が進まず困惑しているとの相談が以前から少なからずあります。これは年金事務所の担当者の理解不足によるものです。その場合は「租税条約に関する申立書」を提出して下さい。

4.課税額の計算方法
 源泉課税は年金額が60万円か114万円を超える金額に対して20.42%(0.42%は復興特別所得税)が課税されます。例えば65歳以上で年金額が120万円の方の場合は120万円から114万円を差し引いた6万円に20.42%の税率を乗じた12,252円が年間の課税金額となります。実際は2か月に1回の支給の都度源泉されますので支給時の源泉税の計算は20万円(年金支給額)―19万円(控除額)=1万円 1万円×20.42%=2,042円となります。

5. その他 ①遺族年金・障害年金は非課税ですので、租税条約の手続きは不要です。なお米国の遺族年金は非課税扱いではありませんのでご注意下さい。②また、国家公務員・地方公務員の退職共済年金につきましては租税条約上の源泉徴収免除の取り扱いはありません。年金額が基準を上回れば源泉徴収されます。